プロローグ

会社の経営の成果は「決算書」にまとめられます。
決算書は会社の「通信簿」です。
決算書を読みこなすことによって、自社の現状が正しく把握できます。
経営者は会社の状態を、日常勘ではわかっていますが、やはり時々は数値でもきちんとつかむことが必要です。
勘は体調によって微妙に狂うことがあります。また、お金に関する重要な判断を行う時は、数値を使った分析や予測も大事です。

”会計はすべての企業に対して、過去についての間違いなき判決者であり、現在についての必要なる指導者であり、未来についての信頼すべき相談相手である。”
(ヨハン・フリードリッヒ・シェアー)

決算書は「損益計算書」と「貸借対照表」の2つです。
これに2000年3月決算から大企業には「キャッシュフロー計算書」が追加されました。
・損益計算書は1年間の経営成績(採算の良し悪し)を
・貸借対照表は決算日の財政状態(資金の運用と調達の構造)を
・キャッシュフロー計算書は1年間の資金収支(経営活動別の資金の流れ)を
それぞれ明らかにしています。
3つの計算書を総合的に検討することにより、会社の全体像がはっきりします。

経営の神様松下幸之助さんは、今から半世紀以上前に、“経営者は企業の病気を早期に発見する名医でなければならない”と言っています。

『問題が起こり、それが数字に現れてきてからあわてて対処してもそれではもうすでに遅いと思う。結局、早期発見が必要である。まだ、どこも体の悪くないときに、名医は顔色をちょっと見て、あるいはちょっとした現象を見て、”あなたはどこが悪いから今から注意しなさい”といって治療する。そうするとほとんど健康体の状態において、その痕跡をすっかりなくす事ができる
経営者も、みずからの企業についてそういう名医でなくてはならない。だんだん状態が悪くなって、”もうあしたあたり・・・”というようになって、”ちょっと待って”と右往左往するのでは、時すでに遅い。外部から見て、ビクともしない段階において、すでに良くないところの根底をきちっと診察し、これは今のうちに直しておこう、これはこうしようということを各自がやってこそ、問題なしに過ごすことができるのである。』

私たちも自分の会社の名医となるべく、まずは決算書を読みこなし、数値にあらわれた現状を客観的に診断しましょう。