相続で取得した土地が土壌汚染されていたときには、浄化・改善費用相当額等を排除して相続財産として評価できるルールがあります。今回は、土壌汚染対策法に規定する要措置区域に存じない土地について、この控除が認められるか争われた事例(平成3年12月1日裁決)を紹介します。

要措置区域外でも控除は認められるか

Aさんは父親が貸し駐車場として利用していた土地を、相続により取得しました。この土地は土壌汚染対策法に規定する要措置区域ではありませんでしたが、土壌汚染が懸念されており、過去における調査でも基準を超える特定有害物質が検出されていました。

国税庁が発出している「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」では、土壌汚染地について改善等の措置が行われる場合、浄化・改善費用相当額等を控除する旨が定められています。この措置にあたっては、要する費用と使用収益制限に伴う減価とのバランスや土地の最有効使用にあたって合理的性などが必要とされています。

Aさんは、この考え方に基づき、相続税申告書において5億円ほどを取得財産の価額から控除指定ましたが、税務署はこれを認めず、相続税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を行いました。しかしAさんは不服があるとして、国税不服審判所で争うこととしました。

税務署は、浄化・改善費用相当額等控除が認められるためには、法令等により汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じ、その費用の発生が確実であることが必要とされるとしました。そして、この土地は要措置区域に存じていないことなどから、汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じている事実は認められないと主張。さらに、この土地は貸し駐車場としての利用が最有効使用の状態であり、その状態を継続するに当たって汚染の除去等の措置を講ずる必要はないとしました。

汚染の実態に即して判断

Aさんは様々な資料を基に、浄化・改善費用相当額を控除することが認められるためには、必ずしも法令等による除去等の措置を講ずる義務や除去等の措置を講ずる義務や除去等の費用が確実に発生することは必要とされないと反論。また土壌汚染が存在する土地が必ずしも要措置区域に該当するわけではないとしました。土地の使用状態についても、この土地が利便性の高い土地であることからなどからすると高層ビル用地が最有効使用であり、高層ビル用地として取引される場合には土壌汚染の掘削除去が前提とされ、その際に必要とされる浄化・改善費用相当額の控除は妥当としました。

審判所はまず、この土地に土壌汚染があることを確認。そのうえで、相続財産の価額は財産の客観的な交換価値であると解されることから、土壌汚染がある土地の価格形成に影響を及ぼす場合を要措置区域に存ずることで汚染の除去等の措置を講ずる義務や費用の発生が生ずる場合に規定する理由はないとして、税務署の主張を退けました。また、土地及びその周辺の状況などから、最有効使用するにあたって掘削除去は必要であり、浄化・改善費用相当額の控除は妥当緒であるとして、Aさんの主張を全面的に認めました。

【教訓】

要措置区域外の土地であっても、土壌汚染が認められればその後の利用や取引に影響は出るものですので、この判断は妥当なものだと感じます。道理に合わないと思った場合にはしっかり状況や法令などを確認し、筋の通った主張をできるようにしたいものです。