固定資産の譲渡は、通常非経営的な取引として認識されます。損益計上書上も特別損益に計上されることが多いのですが、それでは財産評価の際にも「非経常的な利益の金額」として利益金額から除いてもよいのでしょうか。今回は、リース業を営む会社の株式評価で、固定資産売却収益の取り扱いが争点となった事例(平成29年11月20日裁決)を紹介します。

趣旨から考えて不適当と指摘

Aさんは、クレーン車のリース事業を営むB社の株式を、遺贈によって取得しました。B社株式は取引相場のない株式で、その1株当たりの利益金額の算出方法について定めた通達では、直前期末以前1年間における法人税の課税金額から固定資産売却収益、保険差益等の「非経常的な利益の金額」を利益金額から除くこととしています。そこでAさんは、B社がクレーン車の売却益を計上してたことの着目し、この売却益を「非経常的な利益の金額」として除外したうえで、相続税の申告をしました。しかし税務署は、評価額に誤りがあるとして更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を行い、不服としたAさんと争うことになりました。

税務署は、通達が「非経常的な利益の金額」を除くものとした趣旨は、経常的な収益力を株式の価額に反映させることにあるとし、非経常的な利益に該当するか否かは会社ごとに判断するべきとしました。そして、その判断に当たっては、事業の内容、反復継続性などを考慮して判断するのが相当とし、リース業における賃貸資産の売却は事業に付随するものであること、B社はクレーン車を毎期継続的に売却していたことなどから、クレーン車の売却益は「非経常的な利益の金額」に該当しないと主張しました。

売却収入が事業継続に必要

Aさんはまず、評価通達において固定資産売却益が除かれていることからクレーン車の売却益は「非経常的な利益の金額」であると主張。さらにクレーン車の売却益の発生は数年間だけの一過性の現象にすぎないこと、B社が販売体制を整備しなかったことは主観的にもクレーン車の売却を反復継続して行う意思を持っていなかったためとして「非経常的な利益の金額」に該当すると反論しました。

審判所は、「非経常的な利益の金額」に該当するか否かの判断は様々な要素を考慮して判断すべきであり、固定資産売却益として損益計上書の特別利益に計上していることのみをもって非経常的な利益の金額に該当するとは判断できないとしました。そしてB社はクレーン事業を継続するに当たりクレーン車を一定台数保有しておく必要性があるものの、クレーン事業の収益だけではクレーン車の取得資金を継続的に賄うことは困難であったとする現状を確認。クレーン事業を継続するに当たってはクレーン車の売却による収益が必要であり、クレーン車の取得・売却をクレーン事業と一体をなすものとして捉えていたものであるから、クレーン車のの売却益は非経常的な利益の金額に該当しないと結論付けました。

 

【教訓】

通達に「固定資産売却益を除く」とあればそれを鵜呑みにしていまいたくなります。しかし法律と違い通達にはそこまでの確度はありませんので、資金の流れまでを総合勘案した判断は趣旨にのっとったものと思います。単なる株式の評価にあたって、発行会社の資金の流れまで考えるのはなかなかに厳しそうではありますが・・・。