仕事が忙しい時には、本業と関係のない連絡が煩わしくなるものです。それが税務署からの連絡だとなおさらですが、問い合わせに雑な対応をすることによって不利益を被るようなことは少なくありません。今回は更正の請求に当たって提出した書類について、説明をしっかり行わなかったことが不利な結末を招いた事例(令和2年ん11月30日裁決)を紹介します。

請求はすれども十分な説明はなし

医師であるAさんは、ある年に所得税の確定申告書に青色決算書を添付して期限内に申告しました。その後、必要経費に計上漏れがあったとして更正の請求書を提出。請求書には、青色決算書を複写して請求額を必要経費の各項目の余白に記入した書類が添付されていましたが、事実を証明できる書類の添付はありませんでした。調査担当職員は、請求書の内容を確認するためたびたびAさんに連絡をしましたが、応答がないことが多く、その後の面談でもAさんから十分な説明はありませんでした。

そのため職員は、このまま請求書を受け取ったとしても審査を行うことができないとして書類を返却しようとしたのですが、Aさんはそのまま書類を置いて退出しようとしたため、この書類を遺失物として処理する旨を伝えました。しかし実際にはこの書類も添付書類として扱って検討したうえで、Aさんに対し更正をすべき理由がない旨の通知処分を行いましたが、Aさんはこの処分に不服があるとして国税不服審判所で争うこととしました。

Aさんの主張は、更正の請求書に係る法的の期限に間に合うよう書類を提出したにもかかわらず職員は書類を遺失物として取り扱い、内容の審査をしていないため、この処分は取り消されるべきとするものでした。

立証すべきなのは納税者と税務署のどちらか

これに対して税務署は、遺失物とすると伝えた書類も、実際には添付書類として検討したと反論。さらに面接のほか、電話や文書によって再三にわたり書類の提出を求めたこと、提示された書類は必要経費の内容が確認できなかったことなど、Aさんが内容をしっかり証明しようとしなかった点なども指摘して、通知処分の正当化を主張しました。

審判所はまず、更正の請求にあたっては請求者において立証責任を負うとしたうえで、Aさんは提示した書類について職員が質問しても明確な説明を行わず、申告書の内容が事実に反することについて具体的な主張立証をしなかったので、税務署は当初提出された申告書をそのまま正当なものとして納付すべき税額を確定すれば足り、それ以上に所得金額等が真実の金額に反するか否かについて調査義務を負うものではないとしました。

そして職員が通知処分を行うまでの間に、Aさんに対して再三の電話連絡、事実証明書類の提出要求、面談、書類についての質問および仕訳帳との照会を行ったことが認められることから、これらの事実は、この通知処分に係る一連の調査があったというべきであり、調査担当者が調査しなかったとするAさんの主張は認められないとしました。

【教訓】

税務調査は気分の良いものではありませんので、Aさんのように対応してしまう気持ちも理解できます。しかし自らが請求した更正処分については、面倒がらずに証明をしないとこの事例のように却下されてしまいます。自らの主張を通すためにはしっかり頑張らなければいけないようです。