共働き夫婦のなかには、お互いの収入を把握していないケースもあるようです。では配偶者控除などの適用間違いがあった時とき、配偶者の所得金額を把握していなかったことが加算税を免除される「正当な理由」に該当するでしょうか。今回は、配偶者の不動産所得を把握していなかったことによる過少申告に対して加算税が課されるかが争われた事例(平成24年9月26日裁決)を紹介します。

妻の所得を把握していないと主張

Aさんは確定申告の際、妻であるBさんが老人控除対象配偶者に該当するとして、配偶者控除を適用した確定申告書を提出しました。しかし税務署から、Bさんには不動産所得があり、その所得は控除対象配偶者の要件を超える金額であるため配偶者控除を適用できないと連絡を受けたためAさんは修正申告を提出し、税務署はAさんに対して過少申告加算税の賦課決定処分を行いました。この処分に納得できないAさんは国税不服審判所で争うこととしました。

国税通則法では、税額の計算の基礎となった事実のうちに修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて「正当な理由」があると認められるものがあるときには、その部分については過少申告加算税を課さないとしています。Aさんと税務署の争いは、この「正当な理由」が争点となりました。

Aさんは、Bさんの不動産所得の発生原因となった駐車場は、BさんとBさんの妹が母親から共同相続したものであり、Aさんはその駐車場に係る賃貸料収入およびその分配に関わることを避けていたと主張。さらにAさん夫婦の各自の小遣いは夫婦別会計であったため、Bさんの賃貸料収入の金額を把握していなかったとしました。さらに、この駐車場は、固定資産税が高額であるうえ維持経費もかさんでいた様子であったため所得が生じないと考えていたとして、配偶者控除の適用を誤ったのにはやむを得ない事情があり「正当な理由」に該当するとしました。

確認を怠った自分の責任

税務署は、「正当な理由」とは真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情はある場合をいい、納税者の税法の不知または誤解といった単なる主観的な事情に基づくケースは該当しないと反論しました。そしてAさんがBさんの所得を把握できなかったとしても、それはAさん自身の責任においてすべき確認を怠ったといわざるを得ず、単なる主観的な事情であって真にやむを得ない客観的事情があったとはいえず「正当な理由」に該当しないと真っ向から反論しました。

両者の主張を聞いた審判所は、Aさんの確定申告が過少申告となったのは、Bさんに賃貸料収入があることを認識していながらAさん自らの意思で所得などを確認しなかったことを理由とすると指摘。Aさんが確認を行ってさえいれば過少申告となることを避けることができたというべきであり、確認を行うことが困難であるといえる客観的事情は証拠上うかがわれないとことからすれば、真にAさんの責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないとしてAさんの主張を退けました。

【教訓】

単なる確認漏れについて加算税がつかないということになるのであればだいぶありがたい話ではありますが、さすがにそこまで甘くはありません。配偶者の所得金額を確認するのが気まずいこともあるかもしれませんが、しっかり確認したいところです。