取引先に税務調査が入って自社との取引についての修正申告が行われたら、自社でも何らかの修正が必要になるのでしょうか。今回は、取引先が行った修正申告に合わせて行う自社の更正の請求が認められるかが争われた事例(平成22年9月21日裁決)を紹介します。
寄附金として法人税のみ修正申告
建築工事請負業等を営むA社とその関係法人であるC社は、C社を発注者、A社を請負者とし、請負代金を7億7490万円とする新築マンションの工事請負契約を締結しました。工事は無事完了してA社にはC社から代金が支払われたのですが、その後に行われたC社への税務調査の際、請負代金がA社の役務提供の内容から見て高額であるとの指摘があり、税務署は通常の取引価格を超える部分を贈与と認定。C社は1700万円をA社への寄附金とする内容の法人税の修正申告をしました。一方で法人税の修正申告は行ったものの、課税仕入れに係る消費税については特段の指摘はなく、寄附金に相当する金額は課税資産の譲渡等の対価に該当しないとする旨の更正処分や消費税等の修正申告はありませんでした。
このC社の修正処理を受け、A社は寄附金に相当する金額は課税資産の譲渡等の対価の額に当たらないと判断。消費是の課税対象にはならないものとして消費税の更正の請求を行いました。しかし税務署はこの請求を認めなかったため、納得できないA社は国税不服審判所で争うこととしました。
A社は、消費税法において寄附金は資産の譲渡等に係る対価に該当しないとされていることを確認したうえで、C社が寄附金として修正申告をしたということは税務調査において請負代金の一部をA社に対する寄附金と認定したものであり、その金額はA社においても寄附金収入となるものであるから消費税の課税対象外であると主張しました。
大切なのは「対価性」
税務署は、この寄附金は法人税法上の寄附金に該当するものではあるものの、請負代金として支払われた金員の一部であり、対価性があるものとして支払われたとものであると反論。消費税法にいう課税資産の譲渡等の対価の額は、その時点での課税資産等の価額(時価)をいうのではなく、対価性のある支払いをいうものと解されるから、請負代金の一部が、法人性法上寄附金に該当するものであっても、消費税法上は課税対象となるとしました。
審判所はまず、消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額は、その取引額が時価であるか否かに関わらず、当事者間で取り決めた実際の取引額であると判断。そのうえで、この取引は有効に成立した請負契約に基づいてA社が建物を完成さて引渡しをし、それに対してC社が代金を支払ったものであり、建物の完成・引渡しとそれに係る代金の支払との間には対価性があると認めるのが相当であるとしました。結果として、取引にかかる対価の額のうち寄附金に相当する金額は、法人性法上は寄附金の額に含まれるとしても、法人税法上は課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるため、消費税等の課税対象になるとしてA社の主張を退けました。
【教訓】
個人的には、法人税法上の寄附金として認定をしたのであれば消費税法上もそれに倣った取り扱いをするのが自然に感じますが、勘定科目の問題ではなく「対価性」という判断を行ったこの事例は、基本に戻る必要性を感じさせてくれるものでした。