滞納した税金を分割にしたり猶予したりする制度として「換価の猶予」がありますが、その際、納税医者が保証人を求められることがあります。では、保証を付けて猶予が行われたにもかかわらず、のちに保証人にお金がなく保証能力がないことが発覚したら、猶予は無効になるのでしょうか。今回は、納税保証によって不動産を差し押さえられた人が保証の向こうを主張した事例(平成30年8月1日裁決)を紹介します。

保証した結果不動産が差し押さえに

換価の猶予をするため担保の提供を求められたA社は、代表取締役であるBさんによる納税保証書を提出しました。税務署はこの保証書が国税通則法に規定する「税務署長等が確実と認める保証人の保証」に該当し、適正な担保に該当すると判断。A社が納税について誠実な意思を有すると認めたことと合わせ、A社に対し財産の換価を猶予しました。

しかし、その後A社は解散。税務署は保証人であるBさんに納付告知処分をしました。しかしBさんは実は、保証を提供した時から納付告知処分の時まで、滞納分を支払うだけの財産を有していませんでした。そこで税務署はBさんの所有していた不動産を差し押さえたのですが、Bさんはこの差し押さえを不服として国税不服審判所で争うこととしました。

客観的な保証能力が決めてではない

Bさんは、この猶予における納税保証は国税通則法に規定する「税務署長等が確実と認める保証人の保証」を根拠としており、この「税務署長等が確実と認める保証人の保証」とは、「金融機関その他の補償義務を果たすための資力が十分であると認められる者」と解されると指摘。保証した当時からBさんには保証義務を果たすだけの資力がなかったとして、納税保証は法律上の要件を欠くものであり無効であるとしました。そして無効な納税保証を前提とされた差し押さえ処分は違法な処分であり、取り消されるべきと主張しました。

この主張に対して税務署は、国税通則法の規定は、保証人の保証能力が国税の担保として確実であると認めた場合でなければこれを担保として徴してはならないことのみを定めており、保証人の能力が客観的には確実ではなかった場合に納税保証を無効とするということまでを定めたものではないと反論。Bさんの資力による保証能力が客観的に確実であったかどうかは、納税保証の効力を左右するものではないとしました。

審判所は税務署の主張を支持。「税務署長等が確実と認める保証人の保証」についての解釈は、保証人の保証能力が客観的には確実でなかった場合であっても保証が当然に無効となるわけではないとするものであるとしたうえで、仮にBさんに滞納国税を保証する資力がなく、Bさんが納税保証を果たすための資力が十分であると認められる者に当たらなかったとしても、そのことによって納税保証まで無効にはならないとしました。Bさんの主張は採用されず、差押処分自体は所定の要件を満たしていたことから、差押処分を不相当とする理由はなく、差押処分は適法であると結論付けました。

【検討】

要件の根本が覆れば、それを基とした処分が無効となることはあります。そこを狙った争いだったのかもしれませんが、担保の有効性は換価の猶予の要件を左右するものではないという結論となりました。担保に関する規定の射程範囲を示す例として覚えておきたいところです。