借地権とは建物の所有を目的とする土地の賃借権のことをいい、借地権が存在する土地は使用が制限されるなどの理由から、相続税を計算する際には自用地より低い価額で評価されます。では土地の上に建っている建物が賃借の当事者以外の所有化にあっても、借地権は認識されるものでしょうか。今回は登記上の名義が別人でも実際の使用状況をもとに借地権が認識されるかが争われた事例を(平成20年6月27日裁決)を紹介します。

「借地権」の有無が争点に

Aさんは、親であるBさんが所有する土地の上にAさんを権利者とする建物を建て、その建物で理容業を営んでいました。その後AさんはC社を設立し、理容業に加えて新たに美容業を開始しました。C社は、建物についてAさんと建物賃貸借契約、土地についてはBさんと建物の所有を目的とする土地賃貸借契約を締結。建物の改装工事を行い、その工事を建物付属設備として決算書に計上し、減価償却も行っていました。

Bさんが亡くなり、Aさんは土地を相続により取得。この土地については建物の所有を目的とする土地賃貸借契約が締結されていることから、借地権相当額を控除した金額で相続税の計算をしたのですが、税務署はこの土地には借地権に該当する賃借権は存在しないとして相続税の更正処分を行いました。これに対してAさんは、この処分には土地の上に存する借地権を看過した違法があるとして取消を求めて争うこととしました。

税務署は、この土地の上にある建物はAさん名義であり、AさんとC社の間で建物賃貸借契約が締結されていることからも建物の所有者は名義・実質ともAさんと認められるとしました。されに建物はC社が改装工事を行っているものの、Aさんに対して賃料を支払っていることなどから、賃貸借契約上は建物の所有が目的だとしても、土地の上にC社所有の建物は存在しないことから、この賃借権は借地権に該当しないと主張しました。

第三者への対抗要件などが判断基準に

Aさんは、建物の登記名義がAさんのままになっているのはC社の経営状況が思わしくなく、登記費用等の捻出ができなかったからだとした上で、C社が建物の改装を行い、建物全体がC社の業務に充てられていることから、実質的にはC社所有であって借地権が存するのは明らかであると反論しました。

国税不服審判所はまず、改装工事により付加された部分は民法上、建物と一体化していると判断。その部分の所有権はAさんに帰属し、C社が所有権を取得することはないとしました。そしてC社が建物を取得したとするならば行っているはずの名義変更手続きが行われていないことから、仮に土地の所有権が第三者に譲渡された場合には、第三者に借地権を対抗できない関係にあるなどとして、C社の賃借権を相続財産評価において借地権と評価するにはその実質を欠くと結論付けました。

【教訓】

この裁決からは、実際の用途はどうあれ名義変更などによって権利を明確化しておかないといけないという、文字にしてしまえば当たり前のことが確認できます。登記の変更には費用が掛かりますし、実態をしっかり説明すればわかってもらえるだろうという気持ちもあったのかもしれませんが、必要な手続きをしておかないと争いとなったとき不利に働いてしまうということは改めて確認しておきたいところです。