委託費用の計上時期は実務上、請求書の日付に合わせることが少なくありません。しかし税法上の原則的な考え方では、納品のタイミングが計上時期になります。請求日ベースの税務処理は必ず税務署に否認されるとは言えないものの、そもそも請求書の日付は恣意的に替えられるものであり、意図的な期ずれを狙ったと税務署に疑われる可能性は高いので、やはり納品日に計上するべきです。

今回は、請求書の日付を納品日より前に設定していたことが重加算税の対象となるかどうかが争われた事例(平成25年9月26日裁決)を紹介します。

納品に先駆けて請求書発行

乳製品の輸入販売を行うA社は、会社案内を掲載したパンフレットの製作をB社に依頼して、11月25日付の請求書を受け取りました。11月決算のA社はパンフレット製作費を11月30日に支払うとともに、経費として広告宣伝費勘定に計上し、その課税期間の課税仕入れの金額に含め、消費税などの確定申告をしました。

ただ、事業年度末の11月30日の時点でパンフレットは納品されていませんでした。両社の担当者間での電子メールにも「納品は12月10日(金)の予定です」「貴信了解いたしました」とのやりとりが残されていて、実際に納品されたのは12月14日でした。

納品日が新年度であるなら、広告宣伝費は新年度に計上しなければなりません。そのため税務調査で指摘されたA社は、広告宣伝費勘定についてはミスを認め、修正申告しました。

しかし税務署の追及はそれだけでは終わりませんでした。税務署の判断は、A社の担当者が予算を11月中に計上したいとの思惑から請求書の受け取りを本来より前倒ししたというもので、すなわち示し合わせによる虚偽の証憑書類の作成に当たり、意図的な期ずれを狙ったとしました。A社に「隠ぺいまたは仮装の行為」があるとして重加算税を課したのです。

A社は重加算税の課税について争うため国税不服審判所の判断を仰ぐこととなりました。

予算管理が目的で税逃れの意図はなし

国税不服審判所はA社の主張を支持しました。納品が遅れることを認識しつつ11月25日に請求書を受け取った理由は、「予算管理を計画的に行う目的」があったためと認定しています。つまり、税金を免れることを目的とした行為ではないとしました。

またA社にはそもそも経費計上のチェック体制に不備があり、計上時期について厳格性を欠いていたことも指摘しました。そのうえで今回の事態も、納品されたという事実の確認を単に怠っていたことによるものと判断し、重加算税を課すべきではないと結論づけました。悪意があったわけではなく、単純なミスであったとしたわけです。

【教訓】

今回の問題点はA社内での予算管理の問題や部署間での連絡の不備といったところから発生しています。決算の前後の時期は、予算やノルマといった様々な思惑が生まれる時期ですし、税金の知識がない社員は税法上のルールを度外視した行動を取ることは大いに考えられます。全社員で税務の知識を共有するのは簡単ではないので、経理担当者は決算のタイミングは普段以上に入念にチェックするようにしてください。

また今回の裁決は、故意の申告ミスではないのに重加算税が課されそうになっても、しっかり説明すれば課税処分が取り消される可能性があるという点で勇気づけられるように感じます。