土地の地目は登記記録に記載されますが、その内容と実際の用途が異なるときはどちらが優先されるものでしょうか。

今回は、登記記録上は畑とされている土地が実際には墓地として利用されているケースで、登録免許税がどちらの用途で計算されるかが争われた事例(平成27年5月25日裁決)を紹介します。

前回に倣って非課税で申請

Aさんは母からの相続で土地を取得し、その登記を行いました。土地の現況は墓地であり、自治体はその土地を固定資産課税台帳に登録しておらず、固定資産税も課されていませんでした。母もこの土地を夫からの相続で取得しており、その際に提出した登記申請書には「墓地のため非課税」と記載し、補正指導を受けることなく移転登記が完了していました。Aさんもそれに倣って登録免許税をゼロ円とする登記申請を行いました。

しかし法務局からこの土地の地目は記録上は「畑」であり非課税とはならない旨の補正指導を受けたため、Aさんはいったん法務局に対し登録免許税を納付して登記を完了したのですが、指導内容に納得いかなかったため、その後還付請求を行いました。しかし税務署に還付すべき理由がないとの通知を受けたため、国税不服審判所で争うことにしました。

Aさんは、登録免許税法では墳墓地に関する規定上、「登記簿(登録記録)上の地目が墳墓地である土地」とは規定していないことを指摘。さらに相続税法などでは墓所を非課税とする判断は現況に従って判断されていることから、登録免許税の計算においてもこれらの規定を類推適用し、実施調査によって判明した事実に基づいて判断されるべきであると主張しました。

現況よりも記録を優先

税務署は、登録免許税法は「現況が墳墓地として認められる土地」とは規定していないと反論。さらに、登録免許税は登記記録などの種別を判断の基としているものであり、他の税法においての判断が現況によりされているとしても、登録免許税も同様に解釈すべき理由はないとしました。

審判所は登録免許税については不動産登記の際に登記官が登記記録などに基づき不動産の地目を形式的に判断する必要があるものであり、「墳墓地に関する登記」が非課税とされるのは登記記録の地目が墓地と記録されている土地に限ると判断。Aさんが取得した土地は、現況記録が墓地であるものの登記記録の地目は畑であるため、この土地は「墳墓地に関する登記」に該当しないとしました。

また相続税法などでは地目の判断が現況に従って判断されているとする主張については、登録免許税と相続税は課税の趣旨を異にするものであるから、相続税において不動産の現況に基づいて判断されているからと言って登録免許税法でも同様にすべきものでもないと判断。過去において土地の現況により非課税と判断された先例がある点に関しても、登記記録では畑であるにもかかわらず非課税とした先例は誤った扱いであり、今回の取扱いの正当性が裏付けられるのもでもないとしてAさんの主張を全面的に退けました。

【教訓】

個人的には納得できるような、できないような判断ではありますが、相続税などと登録免許税では考え方のベースが異なるという点は覚えておく必要がありそうです。

また、先例があるから大丈夫だろうと判断してはいけないというのはちょっと怖いところですね。