賃借した店舗や事務所に、前の入居者が使っていた設備が残っていることがあります。事業に必要なものであればそのまま使用すれば良いのですが、不要なものなら処分をすることになります。今回は不要な設備の取得金額の税務処理について争われた事例(平成7年7月7日裁決)を紹介します。

使う予定のない設備 賃借権とともに取得

飲食店を営むA社はビルの2階の全室を新店舗として借りるため、その部屋を先に借りていたB社との間で、賃借権と設備の譲渡に関する契約を締結し、設備の対価として4500万円を支払いました。その設備はA社にとっては不要なものだったため、引き渡しを受けた後に全て取り壊し、廃棄しました。

その後の決算でA社は、取得した設備の取り壊しが必要になったことから、4500万円を特別損失として損金の額に算入しました。しかし税務署は、4500万円は賃借権の取得の対価に含まれるものであり、繰延資産に該当するとしてA社の税務処理を否認しました。

繰延資産に該当すると、4500万円は一度に損金となるのではなく、耐用年数に応じた期間にわたって分割して損金としなければなりません。税務署が適用したのは、資産を賃借や使用するために支出する権利金などの費用を繰延資産とする、法人税法施行令14条でした。

この処分に納得がいかなかったA社は、国税不服審判所に訴え出ました。

A社は、支出に見合う設備を実際に取得していること、また取得した設備はそのまま使用できるものであったことなどを根拠に、設備を取り壊した事業年度に取得価格に相当する支出を損金にできると主張しました。さらにB社の決算書には繰延資産が計上されていなかったことから、ビルには賃家権の慣習はなく、設備の価格を賃借権に含めること自体がおかしいとも主張しました。

設備を利用しないで取り壊したことが決め手

国税不服審判所の判断は税務署の処分を支持するものでした。部屋の引き渡しを受けた日の翌日から設備の取り壊しや新店舗の改修工事が始まっていることに着目し、A社が設備を利用した事実はないと断定。また、B社が営業していた店舗とA社が新店舗で営業しようとしていた飲食業とでは業種が全く異なることから、前店舗の設備の利用価値に着目して支出したものではなく、既存の設備を取り壊した後に新たな内部設備を施して飲食業を営業できるという価値に着目しての支払いであるとしました。

つまり、4500万円の支払いは実質的には建物の賃借を目的としたものなので、借家権の取得費用であると判断し、税務署側に軍配を上げました。B社の決算書に繰延資産の記載がなかった点に関しても、その経理処理はA社の経理処理に影響を及ぼすものではないとして、A社の主張を退けました。

【教訓】

設備の取壊しによる損失はどのような局面で発生したかによって取り扱いが異なります。今回の事例のように取得価格になることもありますし、その年の損金の額になることも、あるいは譲渡のための費用となることもあります。そのため設備分の支出があっても「損金で落ちるからまあいいだろう」と安易に考えてはいけないようです。判断基準は通達から読み取ることもできますが、判断が難しいものは事前に税理士に確認をするようにしましょう。